バイオリンの正しい選び方・ニスの乾燥の状態を見極めよう

2018/09/02
お肌の乾燥に注意

バイオリンの正しい選び方・ニスの乾燥の度合い、状態を良く観察しましょう

 

バイオリンの色、ニスの色は楽器の音、音色とは無関係なので、気にしないようにしましょう、ヴァイオリンの色の好き嫌いで楽器を判断しないようにしましょうという話は前回のブログバイオリンの色の違いは音と関係あるのですか?でお話いたしました。

 

しかし、ニスそれ自体の状態は重要なのです。今回はそれを正しく見極めるお話です。

 

新作楽器でもニスはある程度乾かされた状態で届かなくてはいけないのですが、納品を急いで早くお金が欲しいかったためなのかニスが良く乾いていない柔らかい状態でイタリアから届くようなことがあります。

そういう状態で駒を立ててしまうと、ニスがまだ柔らかいために弦の張力で駒の脚が動いてしまい、ズレた駒の跡が表板に残ってしまうということがあります。

 

ニスの状態から、駒を立てたら脚がズレそうだと予測される場合は、駒を立てずに楽器を吊るすなどしてニスの乾燥を待たなくてはなりません。

 

また、ニスの乾燥が不十分で柔らかい状態は取り扱いが難しいだけではなく、音にも悪い影響があることが少なくありません。

 

それは、ニスが柔らかくまだ乾いていない状態ということは、まだニスが湿った状態、重い状態であるということで、それ自体板の振動が妨げられる方向に働きます。したたがって楽器の鳴りが悪くなる、レスポンスが悪い、音量が出ないなどの症状が現れます。

 

もちろん、このような状態も、ニスが乾いていけば解消されるわけですが、ニスの種類、調合の失敗などによって、なかなか乾きにくい性質のニスが塗られていることもあります。

 

一般的に厚く塗られたニスは乾くのに時間がかかることが多いです。
ニスを厚く塗ると見た目は美しく、高級感あふれるものに仕上がるのですが、厚すぎるニスは楽器の振動板を重くし、振動を抑制する方向、楽器を鳴りにくくする傾向があります。
また、ニスのちょっとした調合の違いで、乾きにくくなってしまい、年月が経っても柔らかいままというニスもあります。

 

ニスの乾燥の度合いの多くは、ニスの表面を観察することでわかる場合が多いです。

 

厚く塗られた柔らかなニスの場合、乾燥が徐々に進行していくことで、楽器の縁の部分から細かいシワのようなものが伸びてきます。
更に乾燥が進むと、全体的にシワがよったり、軽いひび割れのように見えてくる場合もあります。

 

これは、演奏による汗や脂、体温、吐息などによってニスの変化が部分的に進むこともあります。

 

美観上はバイオリンのニスにシワが無く滑らかで艶がある方がバイオリンが美しく見えるのは事実ですが、このシワやひび割れを嫌がって選択肢から外してしまってはいけません。それはニスの乾燥が進み、これからバイオリンの音が美味しくなる良い時が現れたという兆候なのですから。

女性のお肌は乾燥しないよう、毎日のお手入れが必要ですが、バイオリンにとってはニスが乾燥することはむしろ良い音になる兆しなのです。
ご婦人方にとって、シワは大敵。人間のお肌はアンチエイジングが必要かもしれませんが、バイオリンの場合は古くなることエイジングはむしろ音を良い方向に進ませることが多いとされています。ですからそのエイジングが進行していることを示すシワは大歓迎なのです。

 

もちろん、ニスがポロポロ剥げてしまうようなひび割れはNGですが、軽いニスのひび割れやシワはバイオリンにとってはどちらかと言えば歓迎されるべきことなのです。

 

【まとめ】

バイオリンのニスのシワやひび割れは敬遠せず、むしろ良い兆候と有難く思いましょう。