自分一人ではバイオリンを選べない、どれが良いか決められない

2018/11/27
手術中の外科医外科医

自分一人ではどのバイオリンが良いかわからない、決められないから、〇〇に相談させてください

 

これは、店内でお客様に色々と楽器を試していただいて、じっくり時間をかけて楽器を絞り込んだはずなのに、最後になってお客様からよく聞くことばです。
〇〇には実際、色々な人が入るかと思います。

 

例えば、先生、学校だったら先輩、アマオケだったら楽器に詳しそうな人、最近バイオリンを買い替えた人 etc

 

でも、そのお客様が相談しようと考えていらっしゃるお相手は、果たしてバイオリンを選ぶということに関して、本当に相応しい相手なのでしょうか?

 

そのときに注意していただきたいのは、助言を求めているお相手は果たしてどれくらいの数のヴァイオリンを購入したことがある方なのでしょうか?ということです。
つまり、その方はどれくらいの経験値に基づいて意見、感想を述べてくださっているのかということです。

 

もし仮に貴方、あるいはご家族が深刻な病気で手術を受けないと助からないというような状況に陥ったとき、きっと誰もが、腕の良い外科医、評判の良い病院を必死に探されると思います。

 

その際には、同じ疾患の患者の手術の症例数、成功実績をまずお調べになられるのではないでしょうか。その成功実績が選ぶ基準となるはずです。
弦楽器の選定眼その習熟度についても、上記の外科医の場合と全く同じことが言えるのではないかと私は考えます。

 

ただ何軒もの店を回って沢山のバイオリンを見てきた、弾いてきたという経験や、展示会で何台も楽器を見てきたというだけの経験は私は決して信用しません。


 

手術のシュミレーションをする外科医先ほどの外科医の例で言えば、それは論文やインターネットで術式を調べたり、シミュレーターで練習した数に過ぎません。
信頼できるのはそんな机上の話ではなく、どれだけ実際に生身の人間を切ったか、手術をこなしたか、
そして、その成功率、つまりそれでどれだけの患者を救えたのか。その数を誇るのでなければ、決してその病院、外科医を信用できないのではないでしょうか。

 

つまり弦楽器の選定眼の確かさは、ただ色々回って楽器を見るだけではなく、実際にどれだけの数の楽器を身銭を切って購入したかで決まると私は言いたいのです。

 

大変失礼な物言いですが、助言を求められる知人、先生、ネットの掲示板などで発言している人物それらの方々自らが実際に購入された楽器の数はいったいいかほどなのでしょうか?(もちろん、ヤフオクなど転売目的で購入を繰り返して多数の楽器を購入したというような人は論外です。)

 

そう考えたとき、たった数台の楽器しか購入経験がない人と、その数十倍、数百倍の楽器数を購入している我々楽器商とどちらの経験値が勝るかは自ずと結論が出ることでしょう。

ご自分や大切な家族の命がかかった手術を経験の浅い医者に任せられないのと同様、楽器購入経験の少ない人の感想、助言は極めて信頼性が低いのではないのでしょうか。

 

自分では楽器を決定する自信が無い、不安だからと言って、他の人に選定を委ねたり、ネットで情報を集めたりすることの危うさがそこにあるのです。