2018 弦楽器フェア会場でイタリア在住、バイオリン製作家の宮川賢治さんにお会いしました

2018/11/16
日本人バイオリン製作家 宮川賢治

2018 弦楽器フェア会場でイタリア在住、バイオリン製作家の宮川賢治さんにお会いしました

 

宮川さんと私の出会いはかれこれ、15、16年前になるでしょうか、出会った場所はまさに、この弦楽器フェアの会場でした。

 

私が宮川さんのバイオリンに目をとめたのは、会場に展示している新作バイオリンの中では珍しい、ミラノのモダンバイオリン、Pedrazzini をモデルとする新作楽器を展示されていたからなのです。私の眼にはそれは非常に新鮮に映りました。それで、そのとき楽器の脇に立っていらしたご本人にお声をかけた。それが私と宮川さんとのお付き合いの始まりでした。

 

その頃の宮川さんは、働いていたミラノの工房には、歌劇場などもありますから、多くのプレーヤーの楽器が調整、修理で持ち込まれていました。
その関係で数多くのミラノで製作されたイタリアのバイオリンの名器、Guadagnini、Antoniazzi、Pedrazzini、Ornati 等に触れる機会が多かったといいます。

 

宮川さんはその本物の楽器を手元に置きながら、Pedrazziniのコピー、Guadagniniのコピーなどを製作したのです。

 

多くの製作家はStradivariやdel Gesu をモデルとしたバイオリンを製作するのが普通ですが、彼は、修理や修復、調整等で、手元に本物を置くことができたメリット、つぶさに観察することができるというメリットを生かして、まずミラノの名器を模倣するところからバイオリンづくりを極めていったのです。

 

実は現在の宮川さんは次のステージに進んでいます。

 

それは、Stradivari、Guarneri del Gesu の バイオリンの内部構造に着目し、場合によってはStradivari 以前のバイオリン製作家の内部の作り方も研究し、それをご自身のバイオリンづくりに生かしているのです。

 

オールド仕上げ、アンティーク仕上げ、もっとリアルなレプリカなど、いわゆるオールド名器に近づけて作る製作家は以前に比べると増えてきているように思います。しかしながら、それらの多くは、いかに古く見せるかという外観にのみに気を使っている楽器がほとんどのような気がいたします。

 

宮川さんの着眼点は、内部構造にあります。それはまさに、修理、修復を通して、名器の裏側を知る人間だけが可能なことなのではないかと思います。