バイオリンの正しい選び方・ネックの太さの違いをどう判断するか

2018/08/12
バイオリンのネック

バイオリンを選ぶときはネックの太いバイオリンはやめておいてね

 

このようなことを習っている先生や他の人から言われたことはありませんか?

 

確かにネックの太さは、弦の押さえやすさに影響がありますから、結果的に弾きやすさ、弾きにくさに影響します。

身長が低く手が小さい(女性)の方、背は大きいのだけれど小指が少し短い方などはネックが太いと4の指が届かない、弦が押さえにくいことがあります。
また、太さではなく、ネックの形状によっては左手の親指のおさまりがしっくり安定しなくて、それが原因で弾きにくいことがあります。

 

このような状態が長く続き、それを無理していますと、ひどいときは腱鞘炎になってしまうようなことさえもあります。

 

ですから、確かに先生のおっしゃるように、ネックの太過ぎる楽器は、手が小さい方、指が短い方の場合、弾きにくくて演奏に支障が出たり場合によっては手の故障に繋がることもあります。ですから、手の小さい方、指が短い方にとっては「ネックが太過ぎるバイオリンは弾きにくい」というのは事実です。

 

ただし、だからといって、ネックが太いというだけで、音の良いバイオリン、性能の高いバイオリンを選定のときにはずしてしまうことには問題があるでしょう。

 

と申しますのは、ネックの太さというのはある程度はご自分の手の大きさ、指の長さに合わせて、細く削ったり、形状を変えることができるからです。ネックの太さは変えられないと思いこまれている方が少なくないのです。

 

もちろん、バイオリンをご購入前にそれをやってしまいますと、今度は手の大きいお客様が試奏される時に今度は細すぎると問題になってしまいますので、ご購入後にバイオリン職人と相談しながら少しずつ削っていって、ご自分の手に馴染むようにするということになります。

 

要はネックの太さは、ある程度は後から削ることでご自分の手の大きさ、好みの形状にカスタマイズできるということなのです。

 

一方、古い楽器、一旦使用されていた楽器などは、消耗によってネックが細くなってしまったり(ネックもポジション移動などで長年の間には消耗して細くなります)、上記のカスタマイズによってご自分の手に合うサイズよりも細くされすぎてしまったバイオリンに出会うこともあると思います。その際は、ネック継ぎ(ネックグラフティング)という手法で、スクロール(渦巻き)を残して、ネック部分を新しく作り直します。そしてその新調したネックの太さをご自分に合う太さにまで削っていくのです。

修理としては珍しくない内容のものですが、ただネックを削って細くするだけの作業に比べますと、修理時間と費用がかなりかかります。

 

バイオリンのネックの太さの違い

 

【まとめ】

ネックの太さは演奏する際の弾きやすさに大きく影響はしますが、バイオリンを選ぶときはそのことを重視することはありません。
それは、太すぎるネックは削って細くできるますし細すぎるネックはネック継ぎにより適切な太さにできるからです。
ただし、ネック継ぎは時間と結構な費用がかかるので、太いネックを細くする方が楽で費用もそれほどかかりません。
ですからどちらかというと、細すぎるネックの場合は、ネック継ぎに修理に手間、費用がかかるので、もしそれがいやなら、その楽器は候補から外した方が良いのかもしれません。もちろん、その手間、費用を厭わなければその楽器を選ばれることは吝かではありません。そのバイオリンに惚れ込んでしまった場合はネック継ぎをしても手に入れたい(そんな費用は何でもない)と思うことが少なくないでしょう。