バイオリンの選び方、選ぶときの基準。そもそも発音とは?発音を意識する練習方法。

2018/03/24
正しい発音でしゃべる

そもそも発音ってナニ?バイオリンの発音を意識するための練習方法

 

前回のブログではバイオリンの性能を測るモノサシ、指標として『発音』という切り口をご提案しました。

 

今回のブログではそもそも『発音』って何なのか? についてお話してみようと思います。

 

そんなこととっくにわかっているよと言う方はもちろんいらっしゃるでしょうけれど、発音の良い楽器、弓に触れていない方、意識したことがない方にとってはいまひとつピンと来ないのではないかと思います。

 

発音が良いとは、ご自分が音を出そうと思った瞬間に音がパンと出ることです。

 

そしてその音のかたちは、まるで包丁で切った羊羹のように四角く、切り口は真っ直ぐ綺麗な面になっている状態をイメージしてください。

 

切り口の綺麗な羊羹擬音語でお示しするしかないのですが、「パン、パン」あるいは「タン、タン」というように、続けて音符を弾いても、長い羊羹を等間隔に切っていくイメージです。

 

決して、「トゥワ、トゥワ」のように膨らんでしまったり、音の出だし、発音をはっきりさせようと力み過ぎて、「グァ」とか「ギャン」とか音がつぶれてしまったりしてもいけません。

 

 

また発音を意識した音の出し方は、音の始まり、出だしがどこからだかわからない「スー」「ツー」というような弾き方でもありません。

 

もちろん、これは技術に問題があってそのような弾き方ができないこともあると思います。ただ、まずは意識をしないことには始まりません。

 

発音』という概念を知らなければ、それに意識を向けることはできないはずですから。

 

また、発音を意識するとは、音の始まり、終わりを意識する、つまり音の長さ、音符の長さを意識することでもあると思います。

 

でも誰もが「そんなことはとっくに知ってますよ。八分音符と四分音符そして二分音符の違いはわかっていますよ。」とおっしゃられるかもしれません。

 

しかし、譜面を見ると、同じ四分音符でも音符に・ が付いていたり、- がついていたり。また全然付いていなかったりと様々です。
それらの音符をどれぐらい伸ばすべきか、音の長さをどうするかはその都度、演奏するご自身が考えて弾かなければいけないのです。

 

それが、いきあたりばったり、ご自分の都合で、同じ四分音符が長めになったり、短めになったり、弾く度にそれが変わってしまうというようでは、きちんとした曲、音楽にはなりません。

 

別に長めに弾いても、短めに弾いても、いわゆる解釈の問題と言えれば、ご自分がそれぞれの音符の長さを熟慮した上で選択されていれば良いのです。音符の長さを意識せずに、そのときの都合、気まぐれに長めになったり、短めになってしまったりというのではいけません。

音符の長さを意識することとは音符の始めと終わりを意識することです。音符の始めを意識するには、まずその出だし、発音を意識しないことには始まらないはずです。

 

随分前、おそらくもう15年以上も前だったと思いますが、3,000.万円クラスのバイオリンを3台ほど店に並べて展示し、地域のフリーペーパーに試奏展示会のご案内を出したことがありました。

 

そうしたところ、何人かそのバイオリンを弾きにこられた方がいらっしゃったのですが、その中にご自身の楽器と、譜面を持参で来られた中高年の方がいらっしゃいました。

 

その方のバイオリンをちらっと見せていただきましたが、ご年齢から察して、相当昔に買われたのでしょう、失礼ながらまだ日本では「古い、舶来モノのバイオリンなら間違いない」と信じられていた時代の代物といった楽器でした。それで私はあまりそのバイオリンのことには触れませんでした。
ほどなく、お客様は持って来られた譜面を譜面台に広げ、熱心に練習を始められたので、私はお客様が見えないところ、PCの前に移動して、作業をしていました。

 

お客様は2、30分練習されていたでしょうか、その間、私はお客様の姿を見ずに、弾かれている音だけを聴いてたわけですが、さすがに3,000万円級のバイオリンは良い音がするではありませんか。

やはり楽器は大事だなと思い、そろそろお客様の感想をお聞きしようと、作業を止め、お客様のところに近づいて行ってみますと、そこで衝撃の事実が判明します。

 

「なんと、お客様は、ご自身のバイオリンを弾いていらっしゃったのです!」

 

ただ、そのお客様はご自分の好きなように、好きなテンポで、音の長さもまちまちに、そしてどの音符もヴィブラートをかけて、音を膨らませて弾いていらっしゃいました。

お客様が帰られてから私が思ったことは、ご自分が好きなようなテンポで、そして、「自分の楽器は何て良い音なんだと」ヴィブラートをかけてしまうと、バイオリンの音の違い、名器との差はわからなくなってくるということです。

 

つまり、鳴らしている長い音の最初と終わりを切り取ってしまって、真ん中だけを取り出すと、その人なりの良い音が出ていることもあり、それはあまりバイオリンの違いは影響してこないのかもしれないと推測したのです。

 

バイオリンの良し悪し、性能の違いは『発音』、音の立ち上がりにまず出ます。

 

ただ、曲を決められたテンポどおりに、音符の長さを揃えて、曲の頭から最後まできちんと弾き通すということになると、音符の長さがきちんとご自分の意志で管理されなくてはなりません。

それには、音の弾き始め、音の立ち上がりが大変重要で、そこが崩れたら、きちんと同じかたちで音符を曲の最後まで均等に並べていくことなどできないでしょう。

金太郎あめ

 

理想的な発音、発音の良い演奏とは、金太郎飴のように、どこを切っても同じ、均一な響きで演奏を続けられることではないかと思います。

 

大変失礼な言い方にはなってしまいますが、そのお客様の弾き方は音符の長さを意識したり、発音を意識した弾き方ではなかったので、バイオリンの性能の差が出なかったのです。

 

この話を裏返せば、発音を意識しない限り、ご自分の都合でテンポや音符の長さを好きに弾く弾き方をしている分には、楽器の性能は高い必要はなく、バイオリンは単に主観的な好き嫌いでのみ選んでおけば良いことになります。

 

しかし、楽譜通りに、音符の長さに気を使って、曲の最後まできちんと弾き通すためには、まず発音を意識して、またそれがかなえられるバイオリンと弓で弾かないとその実現は難しいということになります。

 

発音を意識する。意識して練習するとはどういうことなのか?それについて動画を作成してみました。