バイオリンの選び方のヒント。楽器の響き方、共鳴の差を注意深く聴いて選んでみましょう

2018/03/10
聴診器、注意深く音を聴く

バイオリンの上手な選び方、試奏(試し弾き)の際のヒント、注意する点

 

楽器の響き方、共鳴音の鳴り方の差を注意深く聴いて選んでみましょう。

 

ひとつ前のブログではバイオリンを選ぶときには、弾くだけでなく、表板の状態、つくりにも充分注意して選ぶことが大事ですよというお話をしました。

 

本日は実際に音を出したときに、バイオリンの響きのどこに注意してその違いを聴くかということについてお話をしたいと思います。

 

全般的な試奏(試し弾き)の方法、上手なやり方、試奏の流れについては以前のブログ試奏の正しいやり方 をご参考にしてください。
そのときに、試奏時に曲が弾けなくても大丈夫というお話をしましたが、今日は、その曲を弾かずに、バイオリンの性能を測る方法をお教えしたいと思います。

 

バイオリンは弓をのせて実際に弾いている弦以外の弦も振動して豊かな響きを産んでいます。
同じ音程であったり、オクターブであったりすると弓で弾いていない他の開放弦が振動します。それが共鳴です。

これは音程がぴったり合わないとこの共鳴という現象は起こらないのですが、楽器のつくり、性能が高いほど、音程が合ったとき(すなわち共鳴が起こったとき)と音程が合っていないときの音の差、響きの差が大きいのです。

 

すなわち、この共鳴音の大きさ、質を注意深く聴くことが、楽器のつくり、健康状態、調整等の良し悪しを判断するにあたっての大きな手掛かりになると私は考えます。

 

ですから、いくら腕が鳴っていても、いきなり難しい曲、速い曲を弾いたりしまってはいけません。それではそれぞれのバイオリンの共鳴音の違いを注意深く聴くことができないからです。

もちろん、難しい曲、速い曲を弾いた時のそれぞれの楽器の機動性、バイオリンのレスポンスなどを判断するのも大切ですが、それは最初からやることではありません。

最初はロングトーンで、この共鳴音を注意深く聴く。それが性能の高いバイオリン、すなわち性能の高い楽器を見つけるための近道だと考えます。

 

ですから、曲が弾けなくても、弾く曲を持って来ていなくても、ロングトーンで共鳴音を確かめられれば楽器の違いは確かめられます。

 


もし、たとえ技術が不安定で音程を正しく取るのが苦手であっても、逆にこの共鳴音を注意深く聴くことで、正しい音程の瞬間がご自分で実感できますから、それはそれで、好都合です。
その正しい音程の瞬間を強く感じやすいバイオリンほど、その音程が合ったときの響きを強くご自分に教えてくれる楽器ほど性能が高い楽器ということで、その楽器で共鳴音を注意深く聴いて練習することが、正しい音程を取る技術の習得につながるのです。

 

私が事あるごとに、バイオリンの性能が大切と言っているのは、正しい技術の習得に密接な関係があるからでもあります。

 

「共鳴音」については 鈴木鎮一著 『奏法の哲学』 全音楽出版社 に基づいて述べさせていただいております。
ご興味のある方は是非この本をお読みになられてみてください。