イタリアモダンバイオリンの試奏・Sesto Rocchi 1956

2017/12/17
イタリアモダンバイオリン Sesto Rocchi 1956

モダンイタリアバイオリンの販売 こんなに 素晴らしい Sesto Rocchi を今までに見たことがあっただろうか!

 

私は初めてこのバイオリンを見たとき、これまで見てきた Sesto Rocchi とのあまりの違いに、驚き、そして、これがSesto Rocchi なのなら、今まで見てきた Sesto Rocchi はいったい何だったのだろうかと強い衝撃を受けました。

 

それは、これまでに良く見てきたSesto Rocchi のつくりとはあまりにも違っていて、随所(材料の選択、f字孔の切り方、楽器のスタイルなど)に Leandro Bisiach や Gaetano Sgarabottoの影響が色濃く現れていたからなのです。

 

その理由は調べて見ると、彼の経歴にありました。

 

Rocchiは17歳の頃から弦楽器製作を「ガエタノ・スガラボット」に学び、さらにその後はパルマの製作学校でバイオリン製作を学びました。
そして学校を卒業した後は、ミラノに行き、Leandro Bisiachの工房に入ります。
その当時の Leandro Bissiach は製作のみならず、修理修復やディーリングと手広く仕事をしていました。
おそらく、Rocchiは Bicciachの工房で、過去に作られた、数多くの素晴らしい名器に触れることが出来たことでしょう。

 

そういう経緯があって、この1956年作のバイオリンには二人の師匠の影響、過去の名器を見て来た経験等々が濃厚に出ているのです。


このバイオリンはSesto Rocchiの製作した楽器の中で最高の部類のものに属することは間違いないのはもちろん、モダンイタリアの名工、名器の中に入れても全く引けを取らないものになっていると思います。
今までSesto Rocchiのバイオリンを見たり、弾いたりしたことがある方、鳴らないし、大したことがない楽器だと思われた方。是非このバイオリンをご覧になられてみてください。今まで見て来たものとのあまりの違いに、私が受けた衝撃と同様、かなりびっくりされることと思います。

 

残念ながら、これ以降に製作したバイオリンは、このような素晴らしさを感じさせてくれるものではなくなってしまいました。
ある方から聞いた話では、結婚した妻が資産家だったか実業家だったかで、Rocchi自身は生活の為に楽器を売らなくても良くなってしまったからだという話を聞きました。それでも暇なので楽器は作り続け、その楽器は外に出ることはなく保管されていたのだといいます。それらが、Rocchi の死後、ある時期に遺族によって放出されたということです。ですから、私が見たSesto Rocchi は誰にも使われていない、ニスの綺麗な状態のものばかりだったのでしょう。

 

奥さんにせっつかれて生活の為にバイオリンを作るというのでも、良い仕事はできなさそうにも思いますが、上記の話が本当だとすると、奥さんの稼ぎがあまり良すぎても、今度は自分自身のモチベーションを失ってしまって、作る楽器に魂が抜けてしまったのかもしれません。

バイオリンもひとつの工芸品、芸術作品だとすると、その作り手のその時の感情や境遇がその作品つまりバイオリンに濃く反映されてもおかしくありませんね。